メキシコ・トセパン協同組合の持続可能な取り組みと森を守るコーヒー(1)
フェアトレードコーヒーのウインドファームさんが主催された、メキシコ・トセパン協同組合のレオナルド・ドゥランさんの講演を聴いてきました。
トセパン協同組合は、1977年、先住民ナワット族を中心にメキシコ・プエブラ州で結成された、有機コーヒーの栽培を中心として持続可能な地域づくりに取り組む団体。女性グループの活動やエコツーリズム、竹などを建材の加工やラジオ局などによるコミュニケーション活動、予防医療、学校、金融機関など様々な活動を行う8つの組合の連合体で、有機コーヒーの栽培にとどまらず、いろんな側面から持続可能な地域づくりに取り組まれています。
その活動のひとつ、「トセパントミン」はマイクロクレジットのシステムを取り入れた市民銀行。トセパントミンとはナワット語で「お金はみんなのもの」という意味なのだそうです。みんな裕福ではないけれど、少しずつをみんなで預けて必要な人に低い金利で貸し付けるという、みんなで分かち合うやり方でお互いを支え合っています。
学校教育にも力を入れています。教育では、学力の向上以外に、先住民の「伝統文化」を伝えること、幸せに生きていく方法を考えること、などを重視しているとのこと。現地では時間は「螺旋状」という概念があるそうです。ぐるっと回って同じところに戻ってきたように思えるけれど、実は少し上昇している。そういう感じに時間が流れて行きます。伝統文化を大事にしながら少しずつ先に進む、ということに繋がる概念です。
考えてみると、私たち日本人の文化や暮らしは、ある時点で伝統的な暮らしからプッツリと分断されてしまったような気がします。たぶん先進国の多くも同じでしょう。それまで脈々と受け継がれてきたものがプッツリと途切れて、それまでにないやり方が一気に広がってしまった。例えば医療にしても、民間療法や自然療法のような代々伝わってきたものを全部否定して、西洋医学に代表される現代医療が医療の中心になりました。それはとっても不幸なことに思えます。
トセパンの人たちは螺旋状の時間の流れを取り戻して、自然と調和して生きる暮らしを選択しました。とても羨ましく思います。こういう活動を行うコミュニティーが世界にいくつもできたら、世界を変えることはそんなにむずかしくないかもしれない、と希望を感じた瞬間でした。
トセパンでコーヒーの有機栽培に取り入れられている森林農法(アグロフォレストリー)は、先住民が昔から行ってきた多様性を大切にする伝統的な農法の延長線上にあるものです。
(つづく)
*画像はウインドファームさんのFacebookからお借りしました。
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